映画「薬指の標本」あらすじ~ネタバレ結末と感想

映画「薬指の標本」のあらすじネタバレと感想を紹介します。

日本人作家 小川洋子原作の小説「薬指の標本」が、フランス人女性監督により美しいフランス映画になりました。

美しい靴に対してのフェティシズム。

主人公が標本技師と一緒になるためにとった選択は…。

おすすめ度は★★★★☆!

映画「薬指の標本」の作品情報

≪公開≫
2005年(フランス)

≪監督・脚本≫
ディアーヌ・ベルトラン

≪原作≫
小川洋子

≪キャスト≫
オルガ・キュリレンコ、マルク・バルべ

≪配給≫
エレファント・ピクチャー

 

映画「薬指の標本」のあらすじ~ネタバレラスト

主人公 イリスは田舎町の炭酸水工場で働いていました。

ある暑い日、イリスは割れた瓶で左手薬指の先端をそぎ落としてしまいます。

イリスはこの事故をきっかけに工場をやめて、町へ仕事を探しに行きます。

 

町の中の森には古い建物があり、そのドアに「標本作製助手募集」の張り紙がありました。

イリスはベルを鳴らし、出てきた男性に仕事を探していることを伝えます。

イリスを迎え入れた男性は、標本技師でした。

古い建物は、思い出の品を標本にして保管するためのラボ(研究所)で、翌日から働くことになりました。

標本技師は、ある少女が持ってきたという「家の焼け跡に生えたキノコ」の標本を見せてくれました。

 

ある日、イリスは標本技師からボルドー色の美しい靴をプレゼントされます。

靴のサイズはピッタリで、イリスは不思議に思います。

標本技師は、その靴を常に履いて欲しいとイリスに言います。

その靴を履き、標本技師に包まれるような、支配されているような気持ちで、仕事をするイリス。

ラボに持ち込まれるものは、「昔の恋人が作曲した音楽」、「麻雀の牌」、「小鳥の骨」など変わったものばかりでした。

依頼者はいつでも標本を見に来ても構わないのですが、誰一人として来ることはありませんでした。

 

小鳥の骨を持って来た男性がイリスに警告します。

「靴が足を侵食している。靴を履き続けると、いずれ足を失うことになる」

イリスはそれを拒否します。

「標本技師に縛られていたい」

 

ラボに、キノコの標本を依頼した少女が再度訪れました。

今度は頬にあるやけどの跡を標本にしたいと言います。

標本技師は少女を、標本を作るための地下室へと連れて行きました。

地下室はイリスが一度も入ったことはなく、入ることも許されない部屋でした。

少女はいつまでたっても、地下室から出てきません。

扉に耳を当てて聞き耳を立てても、物音は聞こえません。

 

イリスは標本技師に、地下室に入れてくれるよう頼みますが、聞き入れてもらえません。

先端のなくなった薬指の標本作製を依頼することにしたイリス。

これで地下室に入ることができるのです。

イリスは、標本作製に関わる手続きをすべて終わらせ、地下室の前に立ちました。

靴を脱いで、ゆっくりと扉を押し開いていったのでした。

 

映画「薬指の標本」の感想

日本の小説をフランス映画化したと聞くと、ぎこちないような違和感を覚えるかもしれません。

なぜなら、日本人の感覚とフランス人の感覚が、遠く隔たっているような気がするから…。

ですがこの映画からはそんな違和感は一切感じませんでした。

両者が絶妙にミックスされていて、原作に忠実に撮られているにも関わらず、どこまでも美しい完璧なフランス映画に仕上がっています。

見るたびに溜息が出るほどで、目の保養としてもおすすめです。

 

映画の本編について最も気になるのは、主人公 イリスが標本技師に抱いている感情です。

恋なのか、愛なのか、それともそのどちらかでもない感情なのか。

 

イリスは標本技師に「囚われていたい」と思っています。

キノコの標本を持って来た少女に対して、嫉妬めいた気持ちも抱いています。

一晩中一緒にいたい、一緒にいる場所を確保しておきたいという気持ちもあります。

こんなところを見ると、恋なのかなぁと思えますが違うようにも感じます。

 

一方、標本技師がイリスを愛しているかどうかというと…残念ですがそうではなさそうです。

標本技師が愛するのは、イリスそのものではなく「靴を履いた」イリス。

映画の中でお互いに、「愛している」「好きだ」といったささやきが聞こえることは、もちろんありません。

 

イリスは薬指の先端を欠損してしまっています。

左手の薬指というと、女性にとっては特別な意味を持っているものですよね。

結婚指輪や婚約指輪をつける指ですから。

結婚とは、良かれ悪しかれ契約の一種で、指輪は契約の印ともいえます。

標本技師からもらった靴は、そんな指輪の代わりだったのです。

ただ、二人が交わした「契約」は、結婚などという甘美なものではなく、どちらかというと「所有される」契約。

周囲から救いの手が幾度と差しのべられましたが、イリスは自ら望んで受け入れるのでした。

 

最後にイリスは、標本技師に左手の薬指を標本にするよう依頼します。

イリスは標本技師を愛し、愛されたいのではなく、あくまでも「所有されていたい」のだと感じました。

私たち一般の人には理解しにくいものですが、高尚な愛の形なのかなと…。

 

主演のオルガ・キュリレンコは元モデルとだけあって美しく、画面に映えます。

音楽も非常に素晴らしく、ささやくような、木のざわめきのような、耳に心地よい声が響いてきます。

そんな美しいフランス映画の世界をぜひ堪能してください。

 

さいごに

原作者の小川洋子ファンの方には、絶対に見ていただきたい作品です。

フランス映画は苦手な方もいるかもしれませんが、この映画は日本人の感覚が混ざっているためか、拒否感が起きにくい作品に仕上がっています。

小川洋子の世界観がフランス映画でどう表現されているのか、ぜひ楽しんでみてください。

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